あんまり覚えてないや

ポップカルチャーを忘れないようにつらつらと。

監督 坂本欣弘・脚本 北川亜矢子『もみの家』

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学校に行けなくなった主人公・彩花(南沙良)は、若者たちの自立を後押しする施設「もみの家」で過ごすことに。  もみの家の主・佐藤(緒形直人)に温かく迎えられ、自然に囲まれた施設で過ごすうちに自分の気持ちと向き合うようになる・・・という話。本当に心から感動した近年では5本の指に入るほどの邦画名作です。人と人が向き合うということ、人を好きになること、些細なことでお腹を抱えるほど大笑いすること、汗をかいてから食べるご飯が涙が出るほど美味しいこと、大切な人との別れが胸が苦しくなるほど辛いこと、人が死ぬということ、そして人が生まれるということ。普段見過ごされがちな日常の1コマ1コマを丁寧に紡ぎ出し、日々を全うするということを優しく描かれています。

主人公の南沙良が本当に良かった。最初は何もかも目を背いていたが、人と触れ合い、あたたかさを知ることで少しずつ殻が破れていき、日々を全うすることにしっかり目を向けられるようになり、大切な人が去る悲しさや何かに没頭して日々を全うする尊さを知り、最後は人が生まれるということに対面して人知れず涙を流す姿が美しい。

そして、近所のおばあちゃん・ハナエ役の佐々木すみ江さんが物語を優しく彩る存在で印象的でした。ハナエさんが伝えてくれる言葉が本当に温かくて優しくて愛で溢れていました。ハナエさんが亡くなるまで過ごした彩花との最後の数か月が、人が生まれ、日々を丁寧に全うすることの尊さを私たちに教えてくれている気がして、最期のシーンは彩花と同じぐらい心を掴まれました。残念ながら、佐々木さんは現実に昨年亡くなっております。  改めて今回の作品を通じて、  

『女の道は一本道でございます』(2008年・NHK大河ドラマ篤姫」より)

彼女の代表作である篤姫での名台詞の強さを感じました。女優道を全うされた佐々木さん心からご冥福をお祈り致します。

最近のテレビ(1月20日~26日)

最近観たテレビで印象的だった回をこれから定期的に書き綴っていきたいと思います。今週は豊作でした!

1/20『有田ジェネレーション』

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アングラ芸人回。めちゃめちゃしびれた・・・街裏ピンクはさすがの手さばき。もっと売れてくれ~そして衝撃的に面白かったムラムラタムラの「もっこりからのりーもこちゃん」ここ1年間でトップクラスにくだらなくて尋常じゃないぐらい腹がよじれるほど笑った。あの数分間の映像、爆発的に面白い。新型ザコシ感あって好きだなー今まで彼のことを知らなかったのは悔しすぎるな。これだけでも面白いのに、小峠が入ると10倍ぐらい面白くなる。小峠って不思議な存在ですよね。芸人起爆剤というか、間違いなく絶品の笑いに仕上げてくれる。早くアングラ芸人GPみたいな~アングラ芸人の破壊力は底知れない・・・


1/24『探偵ナイトスクープ

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とんでもない神回。8年前に訪れた屋久島で出会ったおばさんに当時の悩みを聞いてもらい励まされ、夢へ1歩踏み出すことができたこと忘れられずお礼を伝えにもう1度会いたいお姉さんの素敵なお話に、間探偵のおなら時の肛門の動きを検証するバカ話まで。ナイトスクープのフルコース。おならってなんであんなに面白いんやろう・・・最後に寛平ちゃんが勢いあまって鹿のようなミを出してしまって、それをアニメーションにしてしまうナイトスクープのアホさが素晴らしすぎた。テレビが揺れた。最高すぎる・・・

 

1/26『にけつッ!』

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ジュニアの蟹とキノコの話が面白かった。ジュニアの世の中に対するまなざしは相変わらず素晴らしすぎる。

スズキスズヒロ『空飛ぶくじら』

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本屋さんで絵が可愛いなと思ってジャケ買いしました。スズキスズヒロさんの短編集なんですが、全部よかったです。
人が「生きている」という質感が丁寧に描かれていて優しい気持ちになりました。それぞれのお話には、「子ども」と「大人」のまなざしがあって、自分の人生と重ね合わせて、人が生きるってどういうことだろう?とじっくり考えたくなるような作品でした。その中でも学生時代のやんちゃ仲間が大人になって再集結する「銃」の話と、5歳の娘から誕生日プレゼントに「空飛ぶくじら」を見たいとねだられて試行錯誤するお父さんの話がすごく印象に残りました。また時間が経ってから読み返したいな。

タイカ・ワイティティ『ジョジョ・ラビット』

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ナチス統治下時代、10歳のジョジョが青少年集団ヒトラーユーゲントに入団し、イマジナリーフレンドであるヒトラーに助けられながら一人前の兵士を目指す少年の日常をコミカルに描き出したアカデミー賞最有力候補の今作。『ライフイズビューティフル』『まぼろしの市街戦』など、戦争をコメディに描いた作品は心に残っているものが多く、今作も予告を観た時からずっと楽しみにしてました。主人公ジョジョ役のローマン・グリフィン・デイヴィスと、彼の親友ヨーキー役のアーチー・イェーツのコンビは最高に可愛いくて泣きそうになった。戦時中でも、無邪気に笑う子どもは本当に尊いな。この映画、基本的に「子どもからみた戦争とヒトラー信仰」として描かれており、青年少年団で洗脳教育として盲目的にナチズムが子どもたちに刷り込まれていくモンタージュがすごかった。 ヒトラーが主人公のイマジナリーフレンドとして登場するのですが、主人公が成長し心情が変化するにつれて、盲目的に神として崇められていた存在が少しずつ崩れて化けの皮がはがれていくメタファーはさすがとしかいいようがないです。そしてこの映画の見どころのひとつ、主人公とユダヤ人女の子との恋の描かれ方は最高でした。手紙のやり取りは最高だし、前日に岩井俊二『ラストレター』を観た後だったから、より心が持っていかれました。そして一番印象に残っているのは、主人公の母親が絞殺されたことに気付くシーン。死体のFSがなく足元だけ映し出され、序盤から印象的だった華やかな母親の衣装が刷り込まれているので、オレンジ色の靴を見るだけで彼の母親だとわかるのですが、これも背の低い「子どもからみた世界」をしっかり表現されていて細部まで丁寧で感動しました。最後の2人のダンスシーンもよかったなー戦争・政治・宗教・人種、表現が難しいテーマだからこそ、コメディエンターテイメントという形でまっすぐ勝負するのは本当にかっこいい。またじっくりと見返したい作品です。
 

岩井俊二『ラストレター』

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待望の岩井監督作品。淡くて切ない素敵な映画でした。誰かを好きになって、恋をする、この思い出だけで私たちは生きられる。たとえその恋の結末が悲しいものだとしても、誰かを愛し愛されて生きたあの日々が、これからもずっと私たちの今を照らしてくれて前に進めるんだ。そんな風に私たちの背中を優しくそっと押してくれるような物語でした。本当に尊い・・・役者陣も素晴らしかった。広瀬すずと森七菜の天使のようなかわいさは圧巻でした。広瀬すずは年々雰囲気が良くなって、目が本当に綺麗だ・・・福山雅治はあの情けない役柄も完璧に自分のものにしていてかっこよかったです。

演出も最高だったなー未咲を本作通じて一切登場させないことで、少しずつ彼らが交わす手紙によって私たちが知らない未咲が浮かび上がってくる構成とテンポ感が抜群。「手紙」という伝達までにタイムラグがあるものを、少しずつインサートで組み立てていくスピード感の描き方はさすが岩井監督です。あと生と死の世界の視点の描き方がすごく印象的。今作は森のロングショットから鮎美たちが水辺で遊ぶ姿のヨリのショットで始まるのですが、前者は死者から即ち未咲の視点で後者は今を生きる者たちの視点。ラストの鏡史郎、鮎美、颯香の会話シーンも遺影越しや俯瞰の画、そして仏壇に灯されるろうそくの火が未咲はすぐそばで見守っているんだと感じさせるカメラワークや構図は美しかった。そしてこの作品を通じて描かれる様々な「二つ」のモチーフ。鮎美(広瀬すず)と颯香(森七菜)は、高校時代の母親の二役を演じ、未咲と裕里は二人姉妹、颯香の父が急に飼うことにした二匹の犬、生と死の視点、過去と現在などさまざまな「二つ」の世界をモチーフとしての描き方が本当に細部まで丁寧で感動しました。ただ、2時間の映画にとどめておくには惜しい作品という印象も受けたかな。大学時代の未咲と鏡史郎の恋愛や、どうして未咲はダメ男にはまってしまったのか?この辺りも深く描いて欲しかったな。2時間だと男目線しか描かれてなくて、女性目線が物足りない印象でした。
いずれにせよ岩井俊二の代表作として何十年後も語られるであろう大傑作であることは違いないです。2020年は名作映画の連続で幸せだ~
 

ボン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』

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巷で超話題の映画。都内はほとんど満席でやっと観れました。
ファーストカットから圧巻で、リズム感がほんとに心地よくてどんどん見入ってしまった。「貧困」「格差」とい社会メッセージをただ投げかけているだけてなく、細かな演出や仕掛けでエンターテイメントとして落とし込む手腕は素晴らしい。上から下、下から上を意識させるカメラワーク、「鍵」と「窓」の巧みな使い方、生まれ育った環境がもたらす文化的資本という名のとれない「臭い」の意味。最後の鍵のシーンはしびれたなー本当に細部まで丁寧に作られてます。

大橋裕之・岩井澤健治『音楽』

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ヤンキー3人組が、ひょんな思いつきでバンドを始める話。最高だ。
アホで、ださくて、無意味な青春時代。だけど、あんな時間や思い出があるこそ、今を生きられるんだよなー大橋裕之さんの絵は本当に不思議な魅力があるなーあの無機質だけど惹き込まれる目が大好きだ。また漫画の方も読み返します。