岩井俊二『ラストレター』
待望の岩井監督作品。淡くて切ない素敵な映画でした。
演出も最高だったなー未咲を本作通じて一切登場させないことで、 少しずつ彼らが交わす手紙によって私たちが知らない未咲が浮かび 上がってくる構成とテンポ感が抜群。「手紙」 という伝達までにタイムラグがあるものを、 少しずつインサートで組み立てていくスピード感の描き方はさすが 岩井監督です。あと生と死の世界の視点の描き方がすごく印象的。 今作は森のロングショットから鮎美たちが水辺で遊ぶ姿のヨリのシ ョットで始まるのですが、 前者は死者から即ち未咲の視点で後者は今を生きる者たちの視点。 ラストの鏡史郎、鮎美、颯香の会話シーンも遺影越しや俯瞰の画、 そして仏壇に灯されるろうそくの火が未咲はすぐそばで見守ってい るんだと感じさせるカメラワークや構図は美しかった。 そしてこの作品を通じて描かれる様々な「二つ」のモチーフ。 鮎美(広瀬すず)と颯香(森七菜)は、 高校時代の母親の二役を演じ、未咲と裕里は二人姉妹、 颯香の父が急に飼うことにした二匹の犬、生と死の視点、 過去と現在などさまざまな「二つ」 の世界をモチーフとしての描き方が本当に細部まで丁寧で感動しま した。ただ、 2時間の映画にとどめておくには惜しい作品という印象も受けたか な。大学時代の未咲と鏡史郎の恋愛や、 どうして未咲はダメ男にはまってしまったのか? この辺りも深く描いて欲しかったな。 2時間だと男目線しか描かれてなくて、 女性目線が物足りない印象でした。